山のふもとに、からし色の美しい日本家屋があります。「食事処 青山亭(せいざんてい)」です。
場所は青葉区寺家町。「寺家ふるさと村」という愛称で親しまれています。ここは横浜なのかと疑いたくなるほど、豊かな自然が色濃く残っています。田園風景は昔ながらの日本そのままです。
東急田園都市線の「青葉台駅」からバスで「寺家ふるさと村駅」で降りるとすぐの所にあります。
季節を感じる大きな窓
坂をのぼると日本庭園があり、「青山亭」はその奥で静かにたたずんでいます。紺色ののれんが奥ゆかしいです。
店内に入ると、木のテーブルと椅子。たくさんの大きな窓があり、四季折々の風景が目を楽しませてくれます。
「お好きな席にどうぞ」という店員さんの声に誘われて、窓辺の席に腰をかけました。窓にはすだれが掛かっていて、穏やかな冬の陽光が差し込んでいます。
私が着いたのは13時過ぎ、すでに三組のお客様がお食事中でした。午前中は貸切だったそうです。
一つひとつが丁寧な「お弁当」
メニューにはお弁当、ざるうどん、ざるそばと和食がならんでいます。私は「お弁当セット」にしました。
待っている間、後ろから「おいしいね」「おいしいね」と言い合う声が聞こえてきて、おいしいおすそ分けをしてもらった気分です。
運ばれてきた「お弁当セット」からは、ゆらゆらと湯気がたちのぼっています。いかにもあたたかそうで、思わず見惚れてしまいました。
お盆に重箱一段、白米、味噌汁、小鉢、お茶。そっと添えられた季節の葉は、庭からつんできたそうです。かわいらしい折り紙には顔が描いてあり、お店の方の手作りだとか。和のおもてなしに心が癒されます。
美しい姿をこのままにしておきたいところですが、冷めないうちにいただきましょう。
まずは、味噌汁をすすります。お揚げとワカメ、出汁がきいています。つるんとしたのは、なめこでしょうか。
小鉢には透き通るようなふろふき大根。ゆず風味の酢みそが乗っていて、上品な味わいです。
口の中で崩れるかぼちゃ、厚揚げ、こんにゃく、どれもしっかりと味が染みています。特に肉厚のしいたけは、たっぷりと煮汁を含んでいてたまりません。
弾力がある肉団子、ちょうどいい塩加減のシャケで、ご飯がすすみます。
丸い卵焼きは、やさしい甘さです。
さっぱりとしたカブの酢漬けやコリコリしたタクワンで箸休め。
シワひとつないプリっとした甘さ控えめの黒豆に、飾り包丁が入ったかまぼこを食べると、お正月を先取りした気分になりました。
どれも丁寧に作られていて、しみじみおいしい。
食後のおたのしみ
「お弁当セット」には甘味も付いていて、飲み物はコーヒーと抹茶から選べます。和に浸りたいので、迷わず抹茶にしました。
厨房からシャカシャカシャカと抹茶を立てる音が聞こえてきます。
黒々とした羊羹に寄り添うのは、椿の葉でしょうか。なんとも上品なたたずまい。
羊羹はしっかりとした硬さで、控えめながらも甘さにこくがあって、抹茶とよく合います。
音を感じる店内
気がつくと他のお客様は会計を済ませ、贅沢にも私一人に。
店内には音楽は流れていません。静寂に添えられるのは、鳥のさえずり、時計の針の音、遠くにいる子どもたちの声。時折聞こえる、厨房からの楽しげな会話に、トントントントンという心地よい包丁の音。
冬の光を浴びながら抹茶を飲み干しました。至福の時。
大変おいしゅうございました。
漆器のギャラリー
店内には食事をする所とは別に、漆器が展示されている部屋があります。赤や黒のお椀やお茶の道具入れ、どれも上等そうです。
器のギャラリー
離れには器のギャラリーもあると店員さんが教えてくださいました。
帰り際に覗いてみると、所せましと陶器がならべられていました。どれも作家さんの作品で、値札がついています。購入もできるみたいです。普段使いできそうな大皿や豆皿、カップなどもあり、お手頃な金額がうれしいです。いつか購入してみたいです。
知る人ぞ知る「食事処 青山亭」
数年前に移転をして、お店は以前より狭くなったそうです。昔からの常連さんが入りづらくならないように、あまり宣伝はしていないとか。
そんな隠れ家的、知る人ぞ知る「食事処 青山亭」をこっそりご紹介いたしました。
緑あふれる寺家町の「食事処 青山亭」へ、どうぞお出ましくださいませ。おいしい和食と店員さんが、やさしく迎えてくれますよ。
食事処 青山亭
住所:神奈川県横浜市青葉区寺家町679
アクセス:東急田園都市線「青葉台駅」からバスで「寺家ふるさと村駅」下車徒歩約1分
TEL:045-962-2709
営業時間:10:00-17:00(お食事は11:00-になります)
定休日: 火曜日