保土ヶ谷での上棟を終えたあと、山田社長が案内してくれたのは、神奈川県大和市の下鶴間にあるモデルハウス。
「『居心地のいい家ってこういう感じなんじゃないかな』って僕らが思い描いて創った場所にこれから行きます」
山田社長の表情は、どこか誇らしさを含んでいるように見えました。
「どんなところなんだろう……」と想像を膨らませながら車に揺られます。
日常に溶け込む落ち着いた家
静かな住宅街の一角に、大きな一軒家が見えてきました。
「はい、到着しました。」
山田社長が指さしたのは、白と黒を基調とした落ち着いた外観のモデルハウス。

どこか懐かしい気持ちになる和風の家。
「玄関前にこういう庇(ひさし)が出たテラス的なスペースのある家って都会だとそんなにないでしょ?見学に来てくれたお客さんはみんな『こういう感じっていいですね』って言ってくれる。田舎育ちの僕には当たり前の空間なんだけど…。いわゆる縁側的な意味も持たせた場所なんだ」

玄関に入る前にそう説明してくれた場所は、確かになんだか落ち着きます。陽射しが遮られているせいかここを吹き抜けていく風は少し涼しくて気持ちいいです。

植栽がほどよく育っていて、モデルハウスなのに、人が暮らしているようなあたたかさがあります。
間取りには表れない、風を感じるリビング
「どうぞ、入ってください。」
山田社長が鍵を開け、ゆっくり玄関ドアを開けると、ふわっと温度が変わるような感覚がありました。
外よりほんの少し涼しく、落ち着いた温度。
暮らす場所ならではの静けさがありました。
まず山田社長に案内されたのはリビング。
「ちょっと窓を開けてみますね。」

山田社長がリビングの大きな窓を開けると、家の中の空気が一気に変わりました。
「すごくいい風……!」
感動して思わず口に出してしまうほど、心地よい風がリビングを包み込んでいきます。

山田社長は嬉しそうにその様子を眺めながら、
「この風が抜ける感じがすごくいいんですよ。実際に来るとわかるんですけど、風が通る家って気分が全然違うんです。」
「最近の家は断熱性を上げるということとコストを抑えるという目的で窓の大きさを小さく、数も少なくしています。うちは風通しのいい家を創りたいから窓の数や配置には気を遣うんです。それとあの庇のある空間。あの場所が外から入ってくる風を涼しくしてくれるんです。」
山田社長の考える「居心地のいい場所」ってこういう空間なんだと実感できました。
キッチンから暮らす人を見渡せる間取り

リビングの隣にダイニングがあり、木製の丸テーブルが置かれています。
家族が丸テーブルを囲って、リビングからの風を感じながら朝食を楽しんでいる…そんな光景が目に浮かびます。
「ダイニングって、明るかったり広かったりすればいいってわけじゃないんですよね。食事のときに落ち着いて話せるくらいがいちばん良いと思うんです。」
ダイニングのすぐ横には、カウンターキッチン。

山田社長はキッチンの前に立ちながら、
「ここで料理しながら、家族の様子が全部見えるんです。」
と、カウンター越しにダイニングを覗きながら言いました。

キッチンの横にダイニングが並んでいるので、料理を作ったらすぐにダイニングテーブルに運べ、片付けもしやすい動線が作られていました。
カウンターキッチンの上にはコロンとした雪だるま型のライトが吊り下げられていて、シンプルな中にもちょっとした遊び心も。
カウンターキッチンの前面には引き戸の収納があり、家族が集まる空間をスッキリさせる工夫が随所に見られます。
使い勝手のよい、心の余裕を生む和室
「この家のポイントがもう一つあって、ちょっと見てもらいたいんです。」
山田社長がそう言って案内してくれたのは、1階奥にある和室でした。
引き戸を開けると、畳のいい香りがやわらかく広がります。

さっきまでのリビング・ダイニングの雰囲気とはまるで違う、まるで別宅に入ってきたような特別な雰囲気で、昔懐かしく居心地のいい場所のようにも感じます。
最近では和室のない間取りも珍しくありません。
正直なところ私も、和室=少し古い・使いづらいというイメージを抱いていました。
でも、この和室に入った瞬間、その考えが一気に覆りました。
まず空気が違う。
外の生活音がすっと消えて、畳の上に立っただけで身体が落ち着くような感覚。
外から差し込む柔らかい光やふすまの落ち着いた柄が、現代的なのにどこか懐かしさを生んでいました。
山田社長が説明してくれました。
「畳やネイビーの天井の色、ふすまの柄、和室の雰囲気づくりは全部池崎ですね。僕は間取りとか構造を見がちなんですけど、池崎はこういう雰囲気のデザインが得意なんですよ。素材の組み合わせも全部彼女が決めています。」
すべてが計算されていて、「古さ」とはまったく違う現代の和室の魅力を感じました。
「和室って、無くても困らないけど、あると暮らしの幅が広がるんです。子どもがお昼寝したり、ちょっと横になったり。ご両親を含め来客用としても利用できるでしょ。」
そんな使い方ができるんだ。和室の使いやすさを初めて知りました。
時代に追随するのではなく、暮らし方を考えて家をつくる創喜さんらしい空間でした。
和室からは縁側を挟んで坪庭が見えます。

モミジの枝の影が壁に映り、風が吹くたびにゆるやかに揺れています。

完全な外でもなく、室内でもない、中間の余白。
ここにいると日頃の緊張がほぐれる、心の余裕を生んでくれる和室です。
水まわりも暮らす人目線の動線
和室を出て廊下を進むと、山田社長が水まわりを案内してくれました。

浴室の隣には、可動式の収納棚が設置されています。
浴室につながるこのスペースは脱衣する目的以外に大抵洗面所と洗濯機置き場が兼用になっていたりしますが、ここは脱衣のみの目的で区切られています。
3人の娘さんを育ててきた山田社長は「絶対脱衣スペースは単独の方がいいと思うんだよ」と…(笑)
タオル、下着、子どもの着替え……お風呂に入るときに必要なものがすぐに取り出せるのは便利だと思うし、棚は可動式なので、暮らす人の変化に合わせて自由に高さを変えることができます。

洗面スペースはナチュラルで温かみのあるデザイン。忙しい朝に2人並んでも十分なスペースがあります。
暮らす人に合わせて変えられる家
オープン階段で2階に上がると右側にランドリースペースとサンルーム、左側には寝室や子供部屋へ向かう廊下が伸びていきます。

共働き世代が多くなった今、こういうスペースに対するニーズは高まっているようです。
子供部屋は間仕切りの引き戸を境にした続き間に。

「子供が小さい間はそれぞれの部屋って必要なくて、大きくなって間仕切れればいいと思うんです。子供の成長に合わせて少しだけ使い方が変えられる。大したことじゃないんですが、意外と他にはないらしく、お客さんには喜んでもらえますね」…と山田社長。
家にとって一番大切な場所
ホントは最初に紹介しなきゃいけない場所なんですが、最後になってしまいました。
山田社長が間取りを書くときにいつもこだわっているという場所、それが「玄関」だそうです。
「玄関って家の入口であり出口でもある場所なんですね。
住む人にとっても、訪れるお客さんにとっても、家の中の印象に触れる最初の場所だから、できるだけ明るく、使い勝手もよく、清々しくあってほしいんです」
山田社長はこう言って「玄関」というスペースのことを話してくれました。

玄関は来客の方のための「ゲストフロア」と、住む人が普段利用する「ファミリーフロア」に分かれています。

その横にはウォークインのシューズクローク
「ここも、すごく大事なスペースです。」

奥行きのある空間には壁一面に、可動式の棚がびっしりと並んでいます。
「たくさん靴が置けるので、家族が増えても安心ですね!」
そう私が言うと、
「実はここ、靴をしまうだけじゃないんですよ。」
と微笑みながら話す山田社長。
玄関近くにある棚=シューズクローク、という固定概念しかなかった私は、山田社長の言葉に一瞬混乱しました……(笑)。
「靴はもちろんだけど、アウトドア用品とかベビーカーとかも保管できるんです。コート類をかける場所も玄関内にあった方が便利だし。玄関って案外モノが増える場所なんですよ。」
たしかに実家を振り返ってみると、玄関まわりは凄く混雑していました。
来客用スリッパ、家族の靴、習い事のバッグ、掃除道具など……。
どうしても置き場に困るモノが集まりがちです。
「棚は全部高さを変えられるので、家族構成が変わってもずっと使えるんですよ。収納って今じゃなくて、10年後も使えるかが大事なんです。」
と山田社長は話してくれました。
家に合わせて住むのではなく、家が住む人に合わせてくれる。
山田社長が考える理想の住まいの一端に触れたような思いがしました。
暮らす人の未来まで考えたモデルハウス
ひと通り説明を終えた山田社長から、モデルハウスに対する思いを聞くことができました。
「モデルハウスって、一般的にはすごい家を見せる場所になりがちなんです。『うちで建てるとこんなことまでできるよ!』みたいな。でも創喜は逆で、派手さではなく、現実的な暮らしをイメージする場所にしたくて。」
たしかに、このモデルハウスは華美な設備も、大きすぎる吹き抜けもありませんが、暮らしをリアルに想像できる空間です。
家を建築物としてではなく、そこで暮らす人の未来まで考えた住まいを創る。
そんな山田社長の思いが伝わるモデルハウスでした。
次の密着取材先は、神奈川県を離れ、自然に囲まれた静岡の天城高原。
日常から少し離れて過ごすための別荘計画です。
環境や制約が大きく異なる状況で、山田社長は何を基準に判断し、どんな空間を思い描くのか。
次の記事では、天城高原の現場で見た、もうひとつの住まいづくりをレポートします。
取材・記事:ローカルパワーエンジン株式会社 有山












