取材・記事:ローカルパワーエンジン株式会社 有山
CLOVER(クローバー)生麦の引き渡しを終えて、私たちは別の共同住宅の現場へ移動しました。
<CLOVER生麦の引き渡しの記事はコチラ>
歩いて数分、ここもお施主さんの家系が代々守ってきた敷地で、もう一つの共同住宅「GOAT HOUSE」が建っていました。
GOAT HOUSEも、CLOVER生麦と同じお施主さん名義のもの。ご両親から息子さんへの世代交代を機に、同時に2棟の建築を進めることになったそうです。


GOAT HOUSEはCLOVER生麦と比べると、やや落ち着いた色合いで、ベランダ部分に入ったブラウンのアクセントが印象的。
白を基調とした先ほどのCLOVER生麦とは対照的に、どこか落ち着きのある佇まいです。
受け継がれた土地に立つGOAT HOUSE

GOAT HOUSEは、1階に2世帯・2階に2世帯の計4世帯が住むことができる、全てのお部屋の間取りが1LDKの共同住宅。
ここ数年前から土地活用というと、利回りがよく見えるワンルーム共同住宅の建築が多くなっているそうです。
でも山田社長の考えとしては、少子化で人口が減っている日本で入れ替わりの早い単身者向けのワンルームは、空室リスクと修繕費が大きくなりがちだそう。
夫婦にお子さん一人くらいの小規模ファミリー世帯向けの部屋は選択肢が少なく、入居したら長く住んでくれるため、お施主さんにとって長期的に空室リスクと修繕費が小さくなるので、今回の間取りにしたとのことです。
そういえば、CLOVER生麦も1LDKの間取りでした。
数十年建物を持ち続けるお施主さんにとって、借りる方の実態を踏まえた長期的なプランを提案してもらえるのは、ありがたいことなんだろうと思います。
GOAT HOUSEの現場に戻ります。
建物の1階正面に各住戸への玄関が設けられています。
玄関を開けてみると、すぐに階段が!?

2階の住戸は1階の玄関から階段を上ってお部屋に入る構造のようです。
階段下はシューズインクローゼットになっていました。
空間を上手く使っていますね。
階段を上ってすぐにダイニングスペースが広がり、お部屋の真ん中にはキッチンが設置されています。
お部屋は、大人二人と子ども一人がゆとりをもって暮らせる広さです。


キッチンと階段の間にトイレ、洗面室、浴室が配置されています。
暮らす人が使いやすい動線が描かれています。
設計する人が違えば、住まいの空気は変わる
この日は職人さんの姿はなく、現場はしんと静まり返っています。
「CLOVER生麦は池崎が描いて、こっち(GOAT HOUSE)は俺が描いたやつ。」
そう言って、山田社長が少し照れくさそうに笑いました。
ほぼ同じ時期に、同じお施主さんの依頼で作られたCLOVER生麦とGOAT HOUSE、家のつくりがまるで違います。

山田社長は、ゆっくり玄関の開き方やお部屋の動線を確認しながら
「図面を描く人が違えば、家の空気も変わるんですよね。」
と説明してくれました。
確かにCLOVER生麦が新鮮で元気な家だとすると、GOAT HOUSEは落ち着いて暮らす家、という印象です。

自分で設計した図面を、現場監督として建築まで携わり、自分の手足と五感で確かめるのが山田社長流。
分業が当たり前の建築業界で、設計も施工まで一貫して担当する人は珍しいそうです。
家のことのすべてに責任を持ってくれる。
創喜さんがお施主さんから頼られる理由ですね。
共同住宅でも10年、その先まで見据えた家づくり
外に出ると、山田社長がお部屋の使い方や建物の管理についてお施主さんと不動産会社の方に丁寧に説明していました。

山田社長は過去に不動産会社で働いた経験もあり、建築だけでなく建物を管理する方の気持ちも分かるそうです。
建てて終わりではなく、それから先の5年、10年、そしてさらに先のことも見据えた建築。
そこまで考えてくれる工務店やハウスメーカーはあるのかなと感じました。
続いて山田社長は、ポストを設置する位置を説明。
「ここにポストを、こういう向きで設置します。」
「この角度だとポストを開けるスペースが取りやすいかもしれません。」
外構の工事はこれからとのことで、ポストの位置や玄関前の段差などを細かく確認していました。

「普通は、ここから先は外構屋さんに頼むんですよ。でも、どうせやるなら全部見届けたいんです。」
そう言いながら、山田社長はGOAT HOUSEの全体を見渡していました。
一般的には、工務店の現場監督が仕切るのは家そのものが完成するまで。
外構は外構業者に丸投げしてしまうことが多いとのこと。
でも創喜さんでは外構が完成するまで現場管理が続きます。
そして、そのあとに建物で生活が始まる瞬間まで見届けるのが仕事なんだ、と改めてその責任の強さに驚きました。
お施主さんに寄り添うパートナー
代々受け継いだ土地を、自分の名義で初めて活用する責任の重さ。
お施主さんは私には想像できないであろう重圧を感じていると思います。
「ここも、ようやく形になりましたね。」
「しっかり活用できるように、僕たちも最後まで見ますから。大丈夫、安心して!」
そう言って微笑む山田社長の声には、完成を喜ぶことはもちろん、お施主さんを勇気づける温かさが込められていました。
建てて終わりではなく守り続けるパートナーとして、山田社長の存在はお施主さんにとってとても心強いだろうなと感じます。
説明を終えて車に戻る途中、山田社長はふと別の建物を指さしました。

「ここも、うちでつくった家なんですよ。」
玄関先には、立水栓が設置されていて、そこにはワンちゃんの足跡の模様が描かれていました。

かわいらしい遊び心に思わず笑みがこぼれる私たち。
「こういうの、俺にはできないんですよ(笑)。」と山田社長は笑います。
こうした細かい部分のデザインは、池崎さんの担当と決まっているそうです。
「最初はなかなか入居希望が現れず、どうなることかと思ったけど、こうして暮らしが続いているのを見ると嬉しいですね。」
これまでも、そしてこれからもこの地域で創喜さんの建てた家が、新しい生活を生み出していく。
いつか街を作るようになるのでは?と想像を膨らませてしまいました。
GOAT HOUSEを後にした私たちが、次に向かったのは、この日、一番初めに訪れた上棟途中の保土ヶ谷の一軒家の現場。
途中まで組み上げていた家が、どんな状態になっているのか。
ワクワクした気持ちで現場に向かいました。








