改装中から楽しそうにワインを飲んでいるお店がありました。
夕方にもなれば、店主と思しき女性と数人でテーブルを囲んでいる。ワインボトルにグラス、お店はまだ未完成。なんだかちょっと羨ましい。
そこは店主のもとに続々と人が引き寄せられていく、摩訶不思議な場所でした。
日本ではめずらいAari刺繍教室
刺繍教室としてはじまった「Apéro」がオープンしたのは2020年のこと。講師の石川令子さんが代表のAari(アリ)刺繍教室です。
Aari刺繍とは聞き慣れないかもしれません。
12世紀にインドで発祥したと言われています。先がとがった特殊なカギを使い、チェーンステッチでつないでいきます。18世紀にはフランスにわたり貴婦人の趣味となり、19世紀になるとオートクチュールの刺繍にも使われるようになりました。
日本ではめずらしいAari刺繍を「Apéro」では学ぶことができます。上級、中級、初級クラスがあり、経験に合わせてコースを選ぶことができます。
石川さんは刺繍をしていると瞑想状態に入ると言います。一針一針、縫い進めて行くと、気になっていたことも30分もすれば「まぁいいか」となるそうです。
刺繍をするための木枠には、ネジがついていて布がクルクル巻けるすぐれもの。石川さんの考案です。
大事にされていることは、すきま。刺繍の裏側はたいてい糸がこんがらがっているのに、すきまのおかげで裏側もきれい。
「Apéro」に込められて想い
「Apéro」にはいくつもの想いが込められています。
まず「日常を豊かに」。
例えば「Apéro」では低農薬の野菜も販売しています。低農薬やオーガニックなど体にいい野菜を食べることは、とても豊かなこと。
「そもそも豊かさって何でしょうか?」と石川さんの問いかけ。
子どものころから、よく考える哲学的な子だったそうです。講師を呼んで「日常にある哲学の時間」という講義もおこなっているとのことで、私も思わず申し込みました。
ふと、視線を下げると目に飛び込んできた刺繍。
洋服にほどこした刺繍で、アートをまとう。「日常を豊かに」を体現されていますね。
藍染のワークショップを開催した際には、石川さんも生徒として参加されたそうです。職人さんが好きで、今度は箔の企画も考えているとか。
ぽんぽん飛び出すアイデアにワクワクしてきます。「ワクワクすること」も大切なコンセプトのひとつ。
アートだって学べる
刺繍の枠を超えて、作り⼿の意志を尊重する「新設アートコース」もあります。
ノートに自由に絵を描いて「一生使えるデザイン」を見つけることも勧めているようです。
また、自閉症の方を対象とした「ユルユル手工芸の時間」もおこなっていて、鮮やかな作品に心がなごみます。石川さんは自閉症の方と接していると、素直になれるとおっしゃっていました。
ギャラリーとしての「Apéro」
レンタルスペースもおこなっていますが、これから本格的にギャラリーとしての貸し出しも始めていきます。
私が訪れた時にかけられていたのは、深い青の抽象画。石川さんが一目惚れしたその絵は、最初は海に見え、飾ってみると宇宙になったとか。今は、ドイツの古城に森と道が見えるそうです。
にぎやかなお店の中で、青い絵のまわりだけは深海のような静けさがただよっていました。
「LABO PARK桜まつり」で一日中ワクワク!
3月30日(土)、31日(日)に「LABO PARK桜まつり」が開催されるとのことで、私も遊びに行きました。広い店内もこの日はたくさんの人でにぎわっていました。
能登のワインを飲んで支援するチャリティワインや金継ぎワークショップ、自家焙煎ネルドリップコーヒーなど12ブースが出店。
私が参加したのは「マヤ暦人生相談」「コラージュワークショップ」「調香アトリエ」です。
「マヤ暦人生相談」ではアドバイザーの岩田薫さんが、マヤ暦をもとに生年月日で占います。私の顕在意識と潜在意識を教えてもらうと、最近考えていたことと同じ内容を言われ、とてもしっくりきました。アドバイス内容は……ヒミツです。
アーティストのタカハシトモコさんの「コラージュワークショップ」。
紙切れや布などをどんどん重ねて貼っていきます。少しずらすことで、下の素材がのぞく。それをタカハシさんは「塀の向こう側に見える世界」と言い表します。未知の世界が目の前に広がるようです。
サインを書いて額縁に入れれば、あら不思議、アート作品の完成です。
「調香アトリエ」では、まず「性格累計法アンケート」に答えます。それをもとに調香師の広瀬寛子さんが香りを選んだ上で、私の「なりたい自分」に合わせて香りを少しずつ足していきます。アロマ数滴で変化し、思いもよらぬハーモニーに感動です。
瓶やキャップを選び、アロマサーバーで自分でボトリング。世界にひとつだけの私の香りです。
気がつけば数時間が経っていました。たのしい時を過ごしたあと、心がほんのりあたたかい。未完成だったお店でワインを飲んでいた、かつての景色の一員になれた気がしました。
向こうからどんどんやってくる
「LABO PARK桜まつり」のときだけでなく、いつも店内には誰かの商品が置いてあります。石川さんからお願いしたことはなく、ぜんぶ「置いて欲しい」と言われたそうです。
目指すのは「きもちのいい消費」。金額にプラス社会貢献。買う方もうれしくなる仕組みです。そんな想いに魅せられて、人や物がどんどん集まってくるのでしょうね。
みなさんもぜひ「Apéro」に足を運んで、石川さんとお話をしてみてください。ワクワクに引き寄せられて、思わぬことが起きるかもしれませんよ。
Apéro-時を紡ぐ-
住所:神奈川県横浜市青葉区桜台25-1 桜台ビレジ1B-F-13
アクセス:東急田園都市線「青葉台駅」より徒歩約18分・「桜台ビレッジ前」バス停下車徒歩約1分
TEL: 045-507-4389
営業時間:10:00-18:00
定休日:毎週月曜日・第1第3水曜日・第2第4木曜日・第5週目